デビュー10周年を迎えた朴葵姫の3年ぶり新譜が今月3日に発売されました。初めてのセルフプロデュース作品です。普段であれば彼女の作品はフラゲ(フライングゲットの略語、前日に入手すること)するのですが、7日にコンサートが開催されるので、せっかくであれば会場で購入しようと思い数日間我慢しました。
留学の際に深めたスペインの作曲家による作品を中心に構成されていますが、以前録音したタレガ「前奏曲第五番」やヴィラ=ロボス「ショーロス第1番」も新たな録音で収録されています。
コンサートで何度も聞いている曲が多かったのですが、作品の完成度が高まっています。美しい音色にもますます磨きがかかっています。音色変化は一つ間違うと下品になり曲を壊しかねないのですが、曲の性格を正しく理解したうえで使い分けているので聞いていて全く違和感がありません。そして、必要以上に大きな音を出そうとするあまり音色を損ねるギタリストが多い中、彼女は無理に楽器を鳴らそうとしません。この点は特筆すべきことだと思います。
特に印象に残った曲はマーラー「交響曲第5番 第4楽章 アダージェット」です。優れた自作曲・編曲を数多く残したギタリスト・作曲家の佐藤弘和氏の手による編曲です。曲のテンポが遅く、メロディの多くが長音符で奏でられるため、音の持続が難しいギター独奏には向かない曲です。しかし、メロディをうまく響かせ多彩な音色を用いています。彼女の持つ豊かな表現力もあり、長い曲であるにもかかわらず退屈さを感じることもありません。
今後どこまで彼女の音楽が進化(深化)するのか、それを考えると楽しみしかありません。彼女が好きだと語っているタレガやバリオスだけの作品を集めたアルバムもいつの日か聞いてみたいです。

※終演後には会場でのCD購入者を対象にサイン会が開かれることが多いのですが、このご時世なのでさすがにありませんでした。しかし、事前に用意されていたサインをいただくことができました。